ビートルズというグループ内での序列は、どこまでいってもジョン・レノンは精神的リーダーであり、ポール・マッカートニーは唯一ジョン・レノンを批判できる実力者であり、ジョージ・ハリスンは永久にポールの9ヶ月後輩であった。
つまり、ジョージがどれだけ良い曲を書こうとも、ジョン、ポールの中では完全に対等にはなりえない存在だったんだよね。
大人になってから出会ったんじゃなくて、中高生の頃からの付き合いだから、その精神的序列っていうのは簡単に覆るようなものじゃない。
でもジョン・レノンの凄かったところ、見過ごされがちだけど、10代の頃に年下の人間(ポールでも1つ下)をバンドに入れて仲間としてつるむっていうのは、当時の常識としては考えにくいことだったんだね。
ジョンはリーダーとしての地位を保ちながらも、自分に対してひるまず意見して、向かってくる人間が大好きだった。
「年下であろうが、力のあるヤツ、面白いヤツとは付き合う」っていうジョンのポリシーがなければ、レノン&マッカートニーもビートルズも存在しなかったかもしれない。
今日はそんな「永遠の後輩」ジョージ・ハリスンの Old Brown Shoe を関西弁にしてみよう。
ようやくジョージの曲もシングル盤のB面に入れてもらえるようになってきたよ!
なぜ単数形?
曲ののタイトルを見てまず思うのは、
なんで靴が「シューズ」じゃあなくて、シュー(かたっぽだけ)なんだ!?
ってことだ。
他のいろんな日本語訳を見ると、「古びた茶色い靴を脱ぐ」と訳されていることも多いけど、そうなると片方だけというのはますますおかしいし、stepping out の歌詞と意味的にもニュアンスも合わない。
というわけで僕はイメージとして、靴の中に住んでいる小人が飛び出して行く・・・という解釈にした。
それなら靴が片方でも自然だからね。
ピアノでの作曲に挑戦
この曲でジョージは珍しくピアノで作曲を行っている。
ギタリストであるジョージは基本的にギターで作曲をしていたはずだけど、映画「ゲット・バック」の中で、この曲のコードをピアノで探っているシーンがあるんだよね。
コードの解釈を、凄腕キーボーディストであるビリー・プレストンに相談したりしていて、とても興味深い。
この曲の強烈なシャッフルビート、ギターで作ったのではなかなか出てこないコード展開がこの曲を独特のものにしているね。
翻訳のポイント
冒頭に a love という言葉が出てくる。
この love という言葉の解釈は日本人にとって気をつけないといけない言葉の一つなんだ。
家族や親しい人、動物などに対するいわゆる概念としての「愛情」の場合もあれば、もっと直接的な性愛や恋人そのものを表すことも多い。
この部分を概念としての「愛情」「愛」として訳している訳詞も多いけど、不定冠詞 a がついているということは可算名詞の love であるので、カタチある「恋人」と取るのが正しい。
この曲は「物事の2面性」を表しているという哲学的な解釈をされることも多いね。
でも僕の読解力や感性がおよばないのか、そこまで哲学的な歌詞には思えない(笑)
基本的にはラブソングで、ポールの Hello Goodbye のように対義になる言葉をちりばめた言葉遊び感が強い。
shortとlong、pick up(拾い上げる)とdrag down(引きずり下ろす)、smile(笑顔)とfrown(しかめ面)、loveとhate、earlyとlate など
それよりもこの曲のタイトルである「古い茶色い靴」とはなんのことだろう?
広義で捉えると、古い慣習や固定観念を捨て去るという意味に捉えることはできるね。
でもこの時期のジョージの心情、ビートルズの中での扱い、グループの状況を考えると、ジョージは
「ビートルズから飛び出して新しくやっていきたい、この動物園から出してくれ!」
という心境が、意識的にか無意識的にかはわからないが、詞に反映していたと思えてならない。
原文の歌詞はコチラ
Old Brown Shoe
まっとうな恋人が欲しいんやけど
ほとんどうまくいけへん
髪はショートの娘がええなあ
でもたまに2倍の長さにして欲しいんやけど
こんなボロボロの茶色い靴から飛び出して
お前と恋したいなあ
お前と出会えて嬉しいわ
オレも変わりつつある、ほんまやで
足を引っ張る連中から助けてくれたんや
マヌケ野郎のしかめっつらの代わりに
お前の笑顔が見えるわ
こんな動物園みたいなとこから逃してくれ
お前と恋したいなあ
お前と出会えたことで
すべて変わりつつある、ほんまやで
大人んなったら歌手になるねん
全部の指に指輪はめて
人の言うことなんか気にせぇへん
元気に暮らして、恋をして、ほならいつか
お前がオレの癒しになるかもな、知らんけど!
オレが完璧な男とはいわんけど
抗し難い魅力があるはずやで
オレは天気よりもコロコロ気が変わるけど
2人一緒になったら
お前がオレの癒しになるかもな、知らんけど!
お前の愛が欲しいんや
もう独りは勘弁してぇな
善は急げやで
グズグズしててもしゃあないやん
お前のやわらかい上唇のために行列に並んどんねん
お前と恋したいなあ
お前と出会えて嬉しいわ
オレも変わりつつある、ほんまやで
「この曲を関西弁で訳して欲しい」っていうリクエストや、訳に対する指摘、クレーム、文句も大歓迎です^^