今日はこの曲を訳してほしいというリクエストを頂いたので、やってみたいと思います。
英語的にも意味の取り方など勉強になる点が多いので、それも解説しながらいきましょう。
これぞビートルズ
1965年12月3日にアルバム Rubber Soulと同時に発売された初の両A面シングルで、 Day Tripper とのカップリング。
両A面という扱いがジョンとポールのライバル心を表しているようで面白いね。
メイン部分はポールが書き、ミドル部分はジョン作、突然3拍子になるところはジョージのアイデアだと言われている。
誰かがメインで作って持ってきて、他のメンバーが寄ってたかって曲を仕上げていくというやり方こそがまさにビートルズの真骨頂
ビートルズの曲がそれまでのロック・ポップスの曲と一線を画し、永遠に飽きられない秘密もそこにある、とぼくは思う。
ビートルズの詞
今回この曲を訳すにあたって事前に断っておかないといけないことがあるんだけど。
ビートルズの詞は基本的に20代のおふざけ&下ネタ大好き野郎達が書いたロックの歌詞であり、ごく初期を除き大半のラブソングはセックスを歌ったものであるということ。
特にラバーソウルの頃はいかにオブラートに包み、うるさい大人たち(ジョージマーチンを含む)に怒られないようにそういうことを歌うか、ということに命を懸けていたフシがある(笑)
以前にも言ったけどビートルズの訳詞本や歌詞カードなどは、女性の翻訳者さんが訳されていることが多いということもあって、クリーンに訳されすぎる傾向がある。
20代男子の欲望の視点がない状態で日本語に訳しても、なんだかつまらないことになってしまう。
そもそも「恋を抱きしめよう」なんていう甘っちょろい邦題も悪い。
決して目をハートにして訳してはいけないのだ(失礼)
この曲も世間で一般的に訳されているのはなんだか要領を得ないモノが多く、曲はいいけど詞はなんかフツ―っていう印象の人も多いんじゃないかな。
この曲で歌われているのは Please Please Me などと同様、ヤリたい男子とそうでもない女子のことである。
翻訳時のポイント
タイトルにいきなり代名詞の it が使われていることで、意味がぼやかされている。
it は直前に話していた事柄や人、モノを指すものだから、いきなり it と言われてもなんのことやら漠然としているのだ。
work out はうまくやれる、解決するというような意味の句動詞で、アメリカのスラングでは一発ヤルという意味もある。
句動詞の目的語が代名詞の場合、代名詞が語の間に移動してサンドされるのは英語のクセ。
要は日本語に訳す場合、ポジティブな意味である限り文脈によっていかようにも訳すことができてしまうのだ。
かといってネイティブの人にしたら「work outにはいっぱい意味がある」なんて意識はなく、work outはwork outなのだ。
ぼくたち日本人は work = 働く という一対一の訳語にとらわれてしまいがちだけど、workは漠然と何かモノや事柄が動いているイメージを持つことが大切だ。
「働く」という訳語はあくまで限られた文脈で日本語に訳した場合「働く」が一番ぴったりくるだけの話であって、決してwork = 働くではない。
workはとても広くて豊かなイメージを持った語なんだね。
だからwork outという句動詞は、なにかモノや事柄が動いたり変化して、よくない状態からout(出る)というイメージで捉えるとしっくりくる。
つまりこの曲においてタイトルの it は「女友達とヤレてない」状態のことであり、そこからなんとかoutしたい男の必死の説得の歌なのだ!
ミドルのジョンの「人生は短い・・・」という哲学的な説得が妙に面白く思えてくる・・・
そんなにヤリたいかと(笑)
原文の歌詞はコチラ
We Can Work It Out
ちょっと男の気持ちになって考えてみてぇや
それ、粘って諦めさすつもりちゃうやんな?
君の考え方にこだわっとるとな
オレらの関係はもう風前の灯なんやで
いや、なんとかデキるはずや
あきらめたらあかん
君の言い方聞いてるとな
なんか、こう勘違いしてるみたいやけど、絶対そこ譲らんよな
オレの考え方でいうとな
もっと仲を深めて、男と女の単刀直入な話やん、でないともうオヤスミ、さいならやで
いや、なんとかデキるはずや
あきらめたらあかん
人生短いし、時間もないねん
ごちゃごちゃ言うたりケンカなんかしてる場合ちゃうやん、なあ
いつも思てるんやけど、そういう態度は罪やわ
せやし、もっぺん聞くで
オレが思うにはやな
時間が経たんと、正しいか間違ってたかなんていうのはわからんもんやん
あんまり頑なに君の考えにこだわるとやね
もうほんまお別れの時間になってまうわ
いや、なんとかデキるはずや
あきらめたらあかん
「この曲を関西弁で訳して欲しい」っていうリクエストや、訳に対する指摘、クレーム、文句も大歓迎です^^